亡国のイージス

修正。
むむむむむ…。真田広之の『ダイ・ハード』だと思えばソコソコいけるが、にしては視点が飛びすぎ(この場合はDAISと内閣の部分は要らない)。決定的に必要な「画」を欠いたことで、すべてが薄っぺらになってしまった惜しい映画。
以下ネタばれ。
原作が推理作家協会賞を獲ったのは「如月行の正体をめぐるサスペンス」と「存在しないGUSOHによるサプライズ」の2点が評価されたから、と思うが、脚本では片方はバレバレ、もう片方はばっさりカットされている。では、海の『ザ・ロック』としてサスペンス・アクションに終始するのか? と思えば、中途半端にエピソードが残っていて、宮津の息子の論文が妙に間延びした形で伏線となり、しかもまったく生きていなかったりする。各エピソードの繋がりの薄い構成には、散漫な印象が否めない。
とはいえ前半のヤバさに比べ、後半は結構楽しめた。そこで気になるのが「よく見ろ、日本人。これが戦争だ」に対応する「画」がないことで、せっかくの名台詞が上滑りしてしまっている。ここに予算をかけるだけで後のサスペンスがすべて割増なのだから、きっちり演出すべきだった。本来この台詞も、ハープーン着弾による「戦争そのもの」の画があれば要らないし、使うからにはふさわしい画を要求する台詞だ、ということを監督は思い至らなかったらしい。
そーゆー意味では、ローレライはやっぱり頭一つ抜けていた。やはりアクション映画の画作りにおいて、樋口真嗣は日本人離れしてる。
確かに、役者の演出は坂本監督のほうがはるかに優れている。『ローレライ』のマンガそのもののキャラにくらべ、味のありすぎる原田芳雄の総理や、出ただけで笑っちゃう岸部一徳など、(原作よりも!)血の通った人物たちは感情移入度が高いが、そこが逆に、こじんまりした「日本映画らしさ」を感じさせてしまって残念。あと、ハリウッドから連れてきたトレバー・ジョーンズの音楽が、シーン進行のたるい演出を追い越して走りすぎ、『スチームボーイ』の二の舞に。