ICO

3年ぶりに『ICO』。細かいところは色々忘れてるが、本作特有の空気はやはりすぐ感じた。AV面への偏執的なこだわりと裏腹に、薄味なゲームシステムが醸し出す奇妙な連帯感。『ゴーメンガースト』にも匹敵する「霧の城」の際限ないスケール感に翻弄される主人公イコと、一向に進まないストーリーと連続するパズルに翻弄されるプレイヤーの気持ちが、「それも、ヨルダのためならば」で統合昇華される感覚は、本作がまさしくオリジンだろう。
いま考えると、SCEは本作のプロモーション方法が良くわかっていなかった気がする。「静寂の脱出アドベンチャー」なんてコピーは、ゲームの雰囲気の説明としては最悪に近い(サイコホラー系にも聞こえる)。海外では絶賛の声も良く聞くが、そのアーティスティックな作りが『Myst』と同様に評価されただけで、セールス的な大成功を収めた、という話は聞かない(それでも日本の10倍近く売れたらしい)。
いわゆる「ゲームの魔法」、その絶大な効力に関して本作の右に出るタイトルはいまだにない(恐ろしいことに、操作性やカメラにこれほど欠陥があるのにもかかわらず、である!)。俺自身はまったくこーゆーセンスのかけらもないが、作者たちの「ゲームが不親切になることさえ辞さない、絶対に魔法を解かない姿勢」は見習いたい。あのマニュアルとか。