戦場のピアニスト

ポランスキー入魂の一作だそうで、たしかに娯楽映画っぽくない、近作にない渋い作り。良くも悪くもヨーロッパ映画となっており、似た主題ながら、『シンドラーのリスト』とずいぶん印象のかけ離れた作品に仕上がっている。もちろん、観賞後の残り方も全然違う。
説明(映像、台詞、音楽のどれも)や暗示、暗喩がほとんどなく、淡々かつじわじわと状況が悪化していく展開に、クストリッツァの『パパは出張中!』を思い出した。主人公と分かれた家族がその後どうなった、とかまったく説明されないあたり、いかにもヨーロッパ風味である。
個人的にはこーゆー作品もかなり好きなのだが、前に先輩がこれを観て、「やっぱり今の観客には説明が必要だと痛感した」と言っていたのも納得した。主人公への感情移入を優先するなら、あそこで「2度と帰ってこない家族」を演出する必要があるだろうし、それでないと感動させにくい話ではある。
これは食でもどんなエンターテインメントでもそうだが、やはり受け手にいろんなタイプの「感動」を味わい分けるだけのスキルを持ってもらうよう、送り手が意識して教育する必要があるのかも知れない。でないと、わずかに数種の感動だけが量産される、つまらない世界(いまのTVゲームとか)になってしまいそうだ。