ブレーキ・ダウン

ジョナサン・モストゥ監督、脚本。モストゥのメジャーデビュー作だそうだが、低予算ながら極上のサスペンスとなった。製作はディノ・デ・ラウレンティス、有能な新人に対する目端が利くじぃさんである。たしか、一週だけ全米No.1も獲ってた気がする。
前半は妻蒸発の謎、後半は敵から逃げつつさらわれた妻を取り返す、といたってシンプルなプロットながら、非常に骨太な脚本が観客を画面に釘付けにさせ、サスペンスフルな演出が観客の呼吸を奪う。モストゥは脚本、演出ともども、処女作とは思えぬ練達ぶりを見せつけてくれる。
演出は非常に計算高い、理知的なもので、肉体派(演技派としての顔もあるが)のカート・ラッセルの映像的説得力を計算して脚本を書き、演出している感がある。『激突!』に題材は似ているが、ヒッチコックの再来と騒がれたスピルバーグと違い、ヒッチコックキューブリックを吸収済みのモストゥ、今後ただの器用な職人監督になるのか、なにか武骨なカルト作を見せてくれるのか、興味を持って見守りたい。