解放された世界

ウェルズの思想小説。まだ始まったばかりだが、これってSFではなく、既に文学でもない。まさに、ウェルズ思想そのもの。
ウェルズはバーナード・ショーと並んで、一時期フェビアン協会の思想的指導者だったらしいので、まさかと思ったらやはり、チェスタトンと対立していたらしい。調べてみるとチェスタトンは一時期フェビアン協会と協調路線だったが、その後敵に廻り、ショーやウェルズと論壇で争うことになった、と。
チェスタトンはブラウン神父の他は『ポンド氏の逆説』くらいしか読んでないのだが、生来的犯罪者説を支持し、エリートによる理想世界実現を目指しててはばからなかったウェルズに対し、キリスト教人道主義者として(ブラウン神父よろしく)チェスタトンが、強力な論敵として立ちはだかったのは間違いないだろう。
いってみればモロー博士とブラウン神父の対決だが、その半世紀前のハックスリーVSウィルバーフォースの子弟対決、と言えるかもしれない。
そーいえば、ハックスリーとウィルバーフォースの論争はオックスフォード大学で行われたが、当時そこで教員をしていたルイス・キャロルはそれをどう思ったのだろうか。本名ドジスン名義でなんか書かれてないか、ちょっと気になる。